肛門や肛門周辺に起こる病気のことを「痔」といいます。「お尻に痛みがある」「出血した」「何か違和感がある」などの症状を感じましたら、なるべく早めにご相談下さい。痔のほとんどは、手術をすることなく、生活習慣や食生活を見直ししたり、軟膏や坐薬などの薬治療で症状が改善されます。
肛門科の受診は、恥ずかしいという思いからか、受診をためらう方も多いようです。しかし、痔の治療を受けたほとんどの方から、「もっと早く来ればよかった」と言っていただけていますので、我慢したり、自己判断せず、ご相談にいらしていただければ幸いです。当院としても、患者さんのお気持ちを配慮した診療を常に心がけております。
1.問診
問診表に症状を書き込んでいただき、医師に症状をお伝えいただきます。「どんな症状なのか?」「生活習慣について」「現在の排便の状況」などをお聞きします。
2.診察・検査
視診
医師が目で肛門周囲の状態を診ます。※服を全部脱いだり、脚を大きく開いたりすることはございませんので、ご安心下さい。
触診・指診
直接患部に触れさせていただき、患部を調べます。ゴム手袋を使用し、場合によっては、ゼリー状の麻酔薬を塗るなど、なるべく痛みがないように、配慮して行っております。
肛門鏡による診察
患部の状況によっては、器具を使って肛門内の状態を調べる場合がございます。
3.医師からの説明
診療結果を医師から説明させていただきます。現在の症状、今後の治療法、治療計画など、しっかりご説明致します。症状やご希望によっては、精密な専門の検査や治療ができる医療機関をご紹介いたします。
痔の原因
痔は、男女問わず日本人の3人に1人は痔にかかっているといわれるほど、皆さまに身近な疾患です。痔の起こる原因としては、お尻に負担がかかる、さまざまな生活習慣があげられます。
例えば、便秘のため排便時にいきむ、長時間座り仕事をする、ゴルフやテニスなどスポーツをする時のいきみ、刺激物やアルコールの過剰摂取などによる下痢、冷たい場所に座ったりしてお尻を冷やすことなど、日常生活のさまざまな行動が、肛門に負担をかけてしまうと考えられています。
痔の種類
痔は、大きく分けると「いぼ痔(痔核)」「切れ痔(裂肛)」「痔ろう(痔瘻)」の3種類があります。いぼ状の腫れができる「いぼ痔」、肛門の皮膚が切れる「切れ痔」、肛門に膿のトンネルができる「痔ろう」です。肛門の三大疾患と言われる3種類の痔の中でも、日本人に最も多いと言われ疾患が「いぼ痔」です。
男性のいぼ痔の場合は、長時間のデスクワーク、ストレス、暴飲暴食、飲酒やたばこなどの生活習慣が原因となっていることが多くみられます。女性の場合は、生活習慣に加えて、体の冷え、月経時や妊娠初期になりやすい便秘、出産時のいきみなど、女性特有の事情が原因で悪化する方も多くいらっしゃいます。
また、切れ痔についても、便秘で硬くなった便が、肛門の粘膜を傷つけてなることも多いため、比較的に女性に多い疾患となっているようです。このように痔といっても、お一人おひとりが抱えている痔の種類や原因は異なります。
いずれにしても、初期または症状が軽度の場合でしたら、お薬の治療や生活習慣の見直しで症状が改善されていきます。お尻のかゆみ、痛み、出血、腫れなどの違和感や不調がございましたら、お気軽にご相談いただきたいと思っております。
いぼ痔(痔核)は、肛門科領域で最も多い疾患です。一般的に肛門の症状で受診される方の大半は、この いぼ痔です。いぼ痔には、肛門の中(直腸内)にできる内痔核と肛門の外に飛び出してできる外痔核があります。この内・外痔核は、肛門付近を通る静脈の血液がうっ血してできるものです。
図:いぼ痔
いぼ痔の症状と治療法
- 排便時に出血する
- 肛門からいぼが出てくる
- 肛門から飛び出してくる異物感(脱肛したとき)
- 腫れて激しく痛む(外痔核の場合)
症状としては、出血・痛み・肛門周囲の腫瘤などがあげられます。症状が軽い場合は、軟膏や坐薬で治療をしていきます。また外痔核は血液のうっ血が強くなり血が塊(血栓)を作ると、腫瘤が固く大きくなり痛みが強くなる場合があります。その時は、腫瘤にたまった血栓を除去するための小手術を行うこともあります。
※血栓性外痔核の切開治療手術は当院で対応可能ですが、痔核切除手術などが必要な場合、もしくはご希望の場合には他院をご紹介いたします。
裂肛は、通常「切れ痔」と言われています。便秘時の硬い便や頻回の下痢などで肛門に無理な負担がかかると、肛門の一部が切れて起こります。
図:きれ痔
切れ痔の症状と治療法
- 排便時に出血する
- 排便後、しばらく痛みが続くことがある
- 肛門が腫れる・痛い・かゆい
症状としては、出血・痛み・人によっては肛門周囲のかゆみなどの症状が出ます。治療は、軟膏や坐薬・便通改善のため内服薬などを使用します。
痔ろうは、肛門と皮膚の間にトンネルができる病気です。また、トンネルの中に細菌が入って膿がたまることもあります。
図:痔ろう
痔ろうの症状と治療法
- 肛門の周囲が腫れて痛い
- おしりから、膿が出ている
- おしりが熱をもっている
- 発熱することもある
症状としては、痛み・腫れ・膿が出るなどの症状があります。症状が軽い場合は、抗生物質や消炎剤の内服薬を使用します。また膿が溜まった場合、皮膚に近い場所ならば切開して膿を出す場合もあります。症状の強い場合は、薬で治すことは難しいため手術が必要になります。
※肛門周囲膿瘍の切開治療手術は当院で対応可能ですが、痔瘻手術などが必要な場合、もしくはご希望の場合には他院をご紹介いたします。